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いま密かに人気の「完全果実」って何?開発者に聞いてみた

少年B

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少年B
ぶどうマニア/フリーライター

人気グルメ通販サイトのdancyu.comやうまいもんドットコムなどで人気を集めている、フルーツピューレ「完全果実」。果物をまるごと搾った、まるでジュースのように飲めるという一品です。

果実の味を生かした甘味とスッキリした酸味はもちろんですが、特徴的なのは最後に感じる柑橘のほのかな苦味。他のフルーツジュースやミックスジュースとはまったく違った奥行きを感じるおいしさです。でも、いったい何でこんな味わいになったんでしょう。

今回は「完全果実」を作っているdeltaフルーツ研究所の宮本健さんに、その秘密やこだわり、そして開発のきっかけについてお伺いしました。

少年B
完全果実には、甘味と酸味と、ほのかに苦味もありますよね。レモンや香酸柑橘の。おいしいんだけど、ちょっと一筋縄ではいかない感じの味がするというか。

宮本
繊細な味覚をお持ちですね、ありがとうございます。奥深い味わいを表現するには、おいしさに複雑性をもたせる必要があります。微かに苦味やエグみを含ませるとうまさが引き立つんですよ。意図的にやってるんだけど、それが効きすぎちゃうと「うげっ」てなる。そのバランスには気を付けてる感じですね。

少年B
ミックスジュースや野菜ジュースのフルーツ味って、世の中にたくさんあるじゃないですか。「完全果実」は他の商品とどういうところが違うんですか?

宮本
使用するフルーツの約8割は国産素材で、全て生産者さんから直送されています。バナナは輸入素材ですが、エクアドル産のプレミアムグレードを使用しています。仕入れをエクアドル大使館がサポートしてくださいました。

顔の見える果物やご縁で結ばれたバナナを使っているっていう点もそうなんですが、明確に違うのは非加熱ってことですね。加熱は栄養価を下げてしまうので、身体に栄養を届けることにネガティブです。非加熱品のため「ピューレ」と呼んでいます。

少年B
ジュースじゃなくて?

宮本
正確に話すとややこしい話なんですが、簡単にざっくり言うと「ジュースは加熱をしないと売っちゃいけない」っていう日本の法律があるんです。

少年B
それは殺菌的な意味で、ですか?

宮本
そうです。殺菌っていうのは、ほぼ加熱とイコールだと思ってもらって大丈夫です。一部では加圧殺菌っていうやり方があるんだけど、日本で小さな組織が行うことはちょっと現実的じゃない。 

他にも、ビタミンCやカリウムなど、フルーツに含まれる栄養素には、熱に弱いものも多いんです。自分は人の健康に役立てたいと思って「完全果実」を作っているんですが、ということは加熱したらこのコンセプトが成り立たなくなっちゃう。加熱をせずにどうすればいいか、保健所と何度も打ち合わせを重ねた結果、「冷凍のフルーツピューレ」となりました。

少年B
そんな解決策があるんですね!?

宮本
凍らせることで保存もききますし、加熱よりははるかに多くの栄養を残せるんですよ。

少年B
なるほど……。分類としては、ジュースというよりもコンビニとかで売ってる冷凍フルーツと同じジャンルってことですか?

宮本
そうです、あくまでも冷凍フルーツをピューレ状にしたもの。だから食品じゃなくて素材に近いんですよね。

少年B
いま「素材」って言いましたけども、これを使った料理もあるんですか?

宮本
たとえばカクテルに合わせるとか、カレーの材料にするとか、「完全果実」を混ぜて自家製のドレッシングを作る、製菓材料にするとか。そういう使い方してくださってる人もいるみたいです。

煮詰めていくと砂糖不使用の甘さ強めのジャムになります。加熱が入るので栄養価は下がりますが驚くほど旨いですよ。半解凍状態をシャーベット的に楽しむ方が多いですね。

少年B
飲む以外にも、色んな使い方があるんですね。

少年B
先ほど、バナナ以外は国産の果物を使ってるとおっしゃってましたが、果物って旬があるじゃないですか。時期によって手に入らないものもあると思うんですが、それはどうしているんですか?

宮本
1番わかりやすいのは柑橘ですよね。秋の温州ミカンから始まって、 だんだん大玉になって、皮が厚いのになって、黄色くなって春に終わるっていう。

だから、その時その時で加工する柑橘類は変わります。ここは全部冷凍庫なんですけど、色んな柑橘の置き場があるんですよ。年間通して冷凍状態になってるんで、割となんでも使える。

少年B
じゃあ、ブレンドが変わったりすることも?

宮本
あります。自宅で1000回以上、このファクトリーでも1年以上やってるんで、ブレンドを変えるとどうなるかは頭でイメージできます。

ですが、次、ここをこうしたらどうなるかなって好奇心が常にあるんで、試行錯誤して常に工夫をしてます。

少年B
基本的な配合はもう決まってるけど、その中で。

宮本
そうですね。ある程度の割合は決まってます。野球に例えると、常にストライクゾーンには投げてるんだけど、その中で内角にいくか、外角にいくか、高めにしよう、低めにしようみたいなことは常に考えてますね。

少年B
果物って時期とか、ものとかによっても味が変わるじゃないですか。そのあたりのバランスはどうしてるんですか?

宮本
比較的味のバラつきが少ないリンゴとミカンの割合が多いので、そこはそんなに気にしないですね。多少はロットにより違いますけど、ちゃんとストライクは入りますので。

少年B
他にこだわっているところはありますか?

宮本
「完全果実」はベースとなる果物が5種類、多い順にリンゴ、ミカン、バナナ、 キウイ、レモンが入って、そこに香酸柑橘をミックスしています。

でも、素材によって全部加工の方法が違うんです。単純に混ぜ合わせるだけではこの味が出ないんですよ。

少年B
ミックスジュースみたいに全部混ぜてるわけじゃないんですね。あと、冷凍すると甘さを感じにくくなるって聞きますが、この甘味はどうやって出してるんですか?

宮本
甘さ担当はバナナですね。人間の味覚って、甘さに対して真逆の酸っぱさをぶつけてあげると、甘く感じるようにできてるんですよ。だから、甘味と酸味の両方をうまく立ててあげることを意識してます。

少年B
スイカに塩みたいな感じですか?

宮本
そうです。バナナに関してはまだ秘密があって、たとえばスーパーで売るには見た目が綺麗なほうがいいんだけど、実際食べるときには黒点が出てきた方がおいしいじゃないですか。だから、バナナはあえてすぐに使わず、黒点が出るまで管理しています。

少年B
たしかに、バナナって熟すとちょっと見た目が悪くなっちゃうんですよね。

宮本
じつは熟したバナナのシロップについてもいま研究してるんですけど、砂糖の代わりになるんじゃないかと思うぐらい甘い。完全果実にはそれもそのまま入ってるんで、酸味の中にも甘さが引き立っていると思います。

少年B
宮本さんは、ずっとフルーツに関わる仕事をされてたんですか?

宮本
いえ、僕は元々店舗のインテリアデザイナーだったんですよ。専門誌の表紙を飾るような有名なお店の設計もしてたり、海外のプロジェクトにもいくつか携わってます。

でも今から12年前、40代中盤ぐらいの時にちょっと具合が悪くなってきたんです。

少年B
具合が悪く?

宮本
本当に、なんとなく具合が悪いんですよ。大きな病院で検査しても「何ともない」。ただ具合が悪いんです。

気付いたら体温が37度になって、38度になって、39度になって……これは絶対おかしいだろうと思ってまた病院に行くけど、検査をしたら「何ともないです」って。

少年B
それだけ体調がおかしくて、何ともないわけがないだろう! って思いますよね。

宮本
色んな病院をたらい回しにされたり、高熱のまま家に帰されたりもして、本当に辛かったんだけど、結局は急性の血液がんだったんです。

血液のがんって割と珍しい病気なので、医者も初期診断で疑わないんですね。命が終わりそうな瞬間が何度かありましたが、土俵際ギリギリでこちらの世界に戻ってきました。

少年B
それはよかったです……。

宮本
でも、自分がそういう状況になっていったのは、やっぱり自分の生活習慣にあったんじゃないかと反省をしたんですよ。生活習慣で一番大きいのは、やっぱり食べ物ですよね。

僕は主に飲食店の仕事をしてたから、どういったものが身体にいいかはわかってたんだけど、それをやってたかというとやってないわけです。 忙しさにかまけて、もういい加減なものですよ。

少年B
うっ、耳が痛いです。

宮本
大きな病気をして、やっぱりそれは直さなきゃいけないよなって思って。そうそう、僕の知り合いに生物学者がいて、彼との会話で「人間はサルの仲間」、「野生動物に病気はほぼない」って言われて。

サル目ヒト科ヒト属ですからね。サルも人間も、歯の構造や内臓の形は一緒だし、大きなくくりでいうとサルなわけですよ。じゃあサルは何を食べてるかっていうと、主に葉や種子、木の実に果実、あとは根っこなんですよ。

少年B
へぇ、そうなんですね。

宮本
猿の品種によって多少違うし、昆虫や卵なんかも食べるけど、植物の方が多いみたいですね。人間の食べ物に直すと、これってほとんど野菜と果物じゃないですか。

だからサルを見習って、自分の食事のベースに菜食を取り入れようと。それで果物を自分で買うようになって。

少年B
そこで果物に行き着いたんですね。

完全果実について話す宮本さんと少年Bさん

宮本
そう。ミカンなんかはいっぱい買うと安くなるから、ネットで買う。で、気がついたら箱でミカンが届く、リンゴも届く、バナナもちょっとある……みたいになっていったんですよ。

少年B
果物好きあるあるですね。

宮本
そしたら、今度はカビとの戦いになってくるわけです。

少年B
とくにミカンとか、あっという間にカビますからね。

宮本
いっぺんにたくさん買った方が安いんだけど、これは困ったぞと。そこでジュースにしようと考えるわけです。さらに色んなフルーツを混ぜ合わせると、単体で食べるよりうまいってことに気が付いて。

日本は縦長の島国で四季もあるし、フルーツ王国だから。シーズンでいろんなものが出てきます。そこで、作っていくうちにおもしろくなってくるんですよ。どの組み合わせをどういう割合で混ぜたらおいしいか、とか考えて。

少年B
ジュース作りにハマって、凝り始めたんですね。気持ちはわかるような気がします。

宮本
自宅のキッチンで千回以上作ったんじゃないかな。何月何日、どの素材で何を作った。 出来映えはどうだった。ってメモも取って。自分で飲んで、自分の家族にも飲ませて。たまにたくさんできると、ペットボトルに入れて凍らせて友達にあげて。

そうすると、そのうち「すごくうまいね」「これ売ってよ」って言われるようになって。いやいやそんなの無理だよと思ってたんだけど、そのタイミングでコロナ禍になるんですね。

少年B
はい。

宮本
これから日本はどうなっていくのかなって不安の中で、僕の残りの人生を使ってできることは何だろうと考えた時に、日本の果物をもっと盛り立てていきたいなと思ったんですよ。

日本にはすごくいい果物がたくさんあるし、外国人観光客が高級青果店でたくさん買っていくのに、日本人の消費者は果物の魅力に気付いていないじゃないですか。

少年B
たしかに、日本人は果物の消費量が少ないと言われてますね。

宮本
果物は健康にもいいし、おいしいし。食べた人も、果物を作る生産者さんも幸せになってくれるんじゃないかと。もともと拾ったような命だし、そういう生き方をしてもいいんじゃないかと思ったんです。

宮本
最後に、この試作品を飲んでみてください。何の果物が入っているかわかりますか?

少年B
今までのものよりも、ちょっと優しいというか、まろやかな味がしますね。柑橘の強さが少し抑えられてるというか。これは……桃ですか?

宮本
そう、桃です。柑橘が強いってのはたまに言われるんで、そこは自分でも気をつけなきゃと思ってますね。

少年B
桃を足して合うのかなと思ったんですが、わたしはむしろこっちのほうが好きかもしれません。

宮本
果物ってね、だいたい混ぜれば混ぜるほどうまくなるんですよ。桃を入れる量も試行錯誤しました。ちゃんと存在感が出るように。

少年B
手間がかかってますね。

宮本
前回はいちごを加えて作りました。配合を変えて、アイスとして食べれるものも試作しています。なかなか大量には作れないので、通常の商品として並べるのは難しいかもしれませんが、色んな果物の魅力を引き出していきたいですね。

少年B
次はどんな味が出てくるのかも、楽しみのひとつになるかもしれません。

宮本
健康によくておいしいものを、色んな方々に飲んでもらいたいですからね。これからももっと色んな人に届けられるように、がんばりますよ!

<フルフム編集部より予告>
取材記事『幻の桃、“飛騨のたからもも”を探して』でもご紹介している、つむぎ果樹園さんの桃を使用した『完全果実』が近日発売予定です!また発売がきまったらメディアでもお知らせします。

完全果実 通販サイト

完全果実は人気商品のため、現在(2024/07/29)時点では抽選販売が主になっています。
抽選期間は、SNSで随時告知されるのでそちらもチェックしてみてくださいね。

少年B

この記事を書いた人

少年B
ぶどうマニア/フリーライター

農産物評論サークル「花マル農園」主宰。特にぶどうが好きで、全国各地の農家さんを巡ったり、ぶどうの評論同人誌を出したり、ぶどうの食べ比べ会を開催するなどしています。

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