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レモンの可能性を切り拓く!レモン伝道師の挑戦

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都内某所、ビルの屋上に並ぶレモンが実った植木鉢。育てているのは『レモン伝道師』の朝比奈千穂さんです。
レモンの可能性を広げるため日々奔走する朝比奈さんに、レモンの魅力とその活動について伺いました。

レモンの被り物で登場した朝比奈千穂さん

フルフム編集部(以下、編集部):かわいい!インパクト抜群ですね!

朝比奈さん(以下、朝比奈):レモン伝道師の衣装です!被り物は注文して作ってもらったんですよ。

編集部:全身からレモンへの愛を感じます。これからどんなお話が聞けるのか楽しみです!

編集部:レモンにまつわる活動をしようと思ったきっかけはなんですか?

朝比奈:レモン以外の果物、例えばみかんやブドウや桃って、どんどん品種改良されて、ブランドもたくさんありますよね。相乗的に市場における価値も上がります。
でも、レモンは…?レモンと言われて思い浮かべるものって、何がありますか?

編集部:はちみつレモンとか?

朝比奈:そうですね。レモンといえば、はちみつレモンやレモネード、レモンサワーとか、みなさん大体同じようなイメージを思い浮かべます。世間のレモンのイメージって、その狭〜い範囲で固定化されているんです。私もそうでした。

料理にしても、唐揚げやサラダの付け合わせなど、やっぱりなんか添え物で。
「いや、レモン、もうちょっとなんかないのかな?」って思ったのがきっかけです。

編集部:世間が気づいていない、レモンのポテンシャルに気づいたのが始まりなんですね。

朝比奈:そうです。レモンって誰でも知ってるし、味や形も想像できる。でも、他の果物みたいに「うわ〜すごい!おいしそう!」ってなる人はあまり見かけない。生産者さんでも、出来上がったレモンの使い方までは意外と知らないこともあったりして。
これは、レモンを深掘りしていったら、面白いことに行き当たるかもしれないと思いながら活動に取り組んでいます。

編集部:活動内容について教えてください。

朝比奈:​1年ほど前に「東京レモンプロジェクト」(TOKYO LEMON PROJECT)という活動を始めました。東京に日本のレモンの交流拠点を作って、生産地や生産者さんを知りながら交流していくのをテーマにしています。
レモンが好きな人たちや生産者さんが集まって、レモンのことを語ったり、レモンにまつわるワークショップを開催しています。レモンにまつわるあらゆることが集まる、プラットフォーム的なものができたらいいなと思っています。

編集部:メインの活動はイベントでしょうか?

朝比奈:メインは販売ですね。ただ販売するだけではなく「提案」をします。

レモンは様々な地域で作られています。生産者さんと会ってお話をすると、その方のこだわりや地域の魅力が見えてきます。そういった地域の特徴も含めた総合的なご提案ができればと思っています。

編集部:それぞれの状況やニーズに合わせて、産地や使い方を提案してくれるんですね。

朝比奈:そうです。昨年11月頃、渋谷スクランブルスクエアに店舗を構える「ジューススタンドBUBBLES(バブルス)」の方に国産レモンをご提案させていただきました。そこで、3地域の国産レモン4品種(リスボン、璃の香、ユーレカ、ビラフランカ)を使ったフェアを開催しました。

出来上がったジュースはすごくおいしかったです。この時使用したレモンは防カビ剤・ワックスを一切使っていないし、堆肥とかもこだわっている。香りはもちろん、皮自体の味が良かったりします。それが最大限に引き出された味でした。

2週間だけの開催でしたが、レモン好きの方がたくさん来たみたいです。またやってほしいな。

編集部:飲んでみたい!ぜひまた開催してほしいです。

朝比奈:こんな風に、いろんな地域のレモンがフィーチャーされる場所を増やしていきたいです。レモンについて360度の視点から考えて、レモンのある生活を提案したい。今はまだ45度ぐらいですが。この活動が、日本のレモンの裾野を広げるお手伝いになればいいなと考えています。

朝比奈:他の果物と同じように、レモンも品種や地域によって味や香りに違いがあるんですよ。島で育てられたレモンを食べたとき、かすかな塩味を感じたこともあります。
ただ「レモン=とにかく酸っぱい!」というイメージがあるので、その違いを伝えるのはなかなか難しいですね。ソムリエのように、レモンの味や香りを表現できるように勉強しなきゃと思います。

編集部:味を表現する言葉が増えたら、レモンの楽しみ方も広がりそうですね。

朝比奈:果物の評価って、今のところは甘さが最大のポイントですよね。ブランド価値を上げる一つの要素にもなります。でも、そこにレモンは当てはまらないんです。

編集部:そういえば、レモンの評価ってあるんでしょうか?

朝比奈:レモンの評価はまだまだ未開拓です。今まさに、そういったことを一部の生産者さんたちと話しています。酸度と糖度のバランスを数値化したり、基準を作ったり。それには研究機関の協力も必要だと思うので、ハードルは高いですが進めていきたいですね。

育てているのは、リスボン・マイヤーレモン・璃の香・ビラフランカの4品種。

朝比奈:「東京レモンプロジェクト」(TOKYO LEMON PROJECT)を始めたとき、その象徴としてレモンを育ててみようっていうことになりました。そして、ちよだプラットフォームスクウェアの屋上庭園をお借りしてレモンを育てています。

編集部:レモン栽培は、活動の最初から続けているんですね。

朝比奈:そうですね、最初の苗と比べると倍くらいの大きさになりました。

編集部:とても大きく実っていますね!

朝比奈:この「璃の香(りのか)」は日本で育成された品種の第1号です。日向夏というみかんと、リスボンというレモンの掛け合わせです。特徴としては、この大玉と、非常に皮が薄いことです。

編集部:こんなに大きいのに皮が薄いんですか。

朝比奈:搾汁率が50%強と高く、ジュースみたいです。レモンの香りや特徴を残しつつ、日向夏の甘さを受け継いでいます。みかんとかブドウのような甘さとはちょっと違いますが、グレープフルーツに近いイメージでしょうかね。

編集部:あまり売り場で見かけないですね。

朝比奈:10年ぐらい前に開発が完了してから少しずつ流通が始まっていますが、残念ながら私たちが手軽に買える場所まで来ることはまだまだ少ないです。

でも最近は、温暖化の影響でレモンを栽培できる地域が増え、生産者さんも増えてきています。千葉県の鴨川では璃の香をたくさん作っているので、見かけたらぜひ食べてみてください。

編集部:バラみたいな鋭いトゲがありますね。

朝比奈:品種によって違いますが、レモンはトゲがめちゃくちゃ長いです。切っても生育に問題はなく、実を傷つけたりする可能性があるので早めに切っちゃうことが多いです。でもまあ、切るのも大変です。生産者泣かせの特徴ですね。

編集部:レモンを育ててみて、ほかにも大変だと感じたことはありますか?

朝比奈:屋上でひと夏越えるために、1番大変だったのは水やり。レモンってものすごい水を欲しがるんですよ。有志で集まって育てているので、頻繁に来られる人が少なくて。みんなでどうするどうする!?って言いながらお水をあげに来てました。

それから、みかんと比較すると、芽かき(不要な芽を取ること)をこまめにやる必要があります。寒さ対策もすごく大事です。あと3〜4年ぐらい経つと、寒さも平気になってくるんですが、まだ幼いので面倒見てあげなきゃいけないですね。

編集部:このレモンが実るまで、大変な手間がかかっているんですね。

編集部:レモンを使ったおすすめの料理やドリンクはありますか?

朝比奈:使い方になりますが、100均とかのスプレーボトルにレモン果汁を入れて、料理にシュッシュと振りかけてみてください。

編集部:つけるんじゃなくて、振りかけるんですか?

朝比奈:そうです。液体でつけるのと違って、スプレーだと優しくレモンの風味をプラスできます。お肉やお刺身、餃子に振りかけても美味しかったの。ポテトチップスにシュッシュするのもすっごい美味しい。

編集部:うまく想像できてないかも……。でもレモン風味のポテトチップス、美味しそうですね!

朝比奈:味がすごく変わるというより、すこし爽やかさをプラスする優等生的な役割をしてくれます。唐揚げにレモンかけるのがダメな人も、シュッシュだったら美味しいと思えるかもしれない。

編集部:ほかにも、レモンシュッシュがおすすめの料理はありますか?

朝比奈:国産レモンなら、特に白身魚と相性がいいなって思います。カルパッチョとか焼き魚にもレモンシュッシュが本当におすすめ!

編集部:レモンの現状について、何か変化を感じますか?

朝比奈:10年ぐらい前は、スーパーで売られてるレモンといえば海外産でした。そこに「国産レモン」が出てきました。さらに進むと「瀬戸内レモン」が出てきます。ですが、そこまでですね。

例えば、和歌山産だったり静岡産だったりは「国産レモン」で売られています。なんで書いてくれないのかな〜って私は思うんですけど。たぶん、それで買う人が増えるかというとまだまだなのかもしれません。
でも「国産レモン」もしくは「瀬戸内レモン」なら売れる。という認識がここ10年ぐらいで出来上がりました。これは広島県が地域創生として頑張って取り組んだ結果ですね。レモンを語るうえで外してはいけない地域だなって思います。

編集部:地域の方々のたゆまぬ努力が、広島レモンをここまで有名にしたのですね。
それでは今後、レモンにどのような変化を期待しますか?

朝比奈:活動を通してレモンをもっともっと深掘りして、いろんな人たちに注目してほしいです。
そして、新しい品種がどんどんでき始めたら面白いと思います。極端に酸っぱかったり、皮まで美味しいレモンなんかいいですね。

編集部:それは面白そう!新しいレモンができたら、ぜひ味わってみたいです。
最後に、記事を読んでいる方に伝えたいことはありますか?

朝比奈:日本のレモンは素晴らしい!ぜひ国産レモンを買ってみてほしいです。

編集部:レモンへの熱い思い、伝わってきました!今後の展開が楽しみです。


〈 朝比奈さんよりイベントのご案内 〉

Apéro Citron
日本レモンで味わうフランスアペロ

『ボナペティ!おいしいフランス巡り』の出版記念イベント。南仏の旅の思い出や写真、鴨川産レモンを使ったフランス料理、アペロ、オピネルナイフ体験をご一緒に。

日時
2025年3月1日(土)12:00~14:00

会場
シロイシベースtokyo
東京都千代田区神田錦町3丁目15-16

詳細はこちら


あとがき

インタビューを通して、レモンの奥深さ、そして朝比奈さんの熱い想いに触れることができました。東京レモンプロジェクト(TOKYO LEMON PROJECT)の活動を通して、もっと多くの人にレモンの素晴らしさが広まることを願っています。

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