
「ブルーベリーってこんなにおいしかったの!?」
東京・三鷹の農園で、初めてブルーベリー狩りを体験した親子連れが驚きの声をあげていました。スーパーで買うものとは別次元の甘さと香り。これこそが、完熟ブルーベリーの本当の味なのです。
じつは、意外にも東京が日本一のブルーベリー産地だということをご存知でしょうか?
いまだに人口が増え続け、農地が減り続けている東京が、日本一のブルーベリー産地だなんてとても信じられない。疑いたくなる理由はよくわかります。それでも事実は事実です。
現実に、東京都の収穫量は全国の14.7%で、栽培面積は12.1%。2位長野県の収穫量11.4%と栽培面積8.0%よりも、かなりの差をつけて上回っているのですから。(2022年産、農林水産省調べ)
どうしてこのようなデータが出てくるのか。そこには東京だからこその驚きの理由がありました。
まさかのカラクリ!東京を日本一のブルーベリー産地にしたのは観光客だった!?
フルーツとしてのブルーベリーの特徴として、果実の小ささがあげられます。果実が小さいということは、摘み取るのに多くの人手がかかります。東京の平均時給は日本で一番高いですから、収穫に人を雇うと地方よりも生産コストが上がってしまい不利なはず。
まさかのカラクリは、観光農園の多さと観光農園ビジネスにありました。
観光客が自分で摘み取る観光ブルーベリー狩り園であれば、生産者が収穫しないですむのです。
農園が住宅街の近くに存在すること、人口密度も公共交通網の発達も日本一であること。これが他の道府県の追随を許さない、東京ならではの強みになっていたのです。
ブルーベリー狩りの魅力と、楽しみ尽くすためのお役立ち情報をご紹介!
ブルーベリー狩りの魅力は大きく分けると、「味」「万人受け」「達成感」の3つになります。
まずは、想像を上回るみずみずしい味に驚かされる「味」!
ブルーベリーの果実は、たった2日で味が激変します。小さな実をひとつひとつじっくり見極めて収穫する。これは観光客だからこそできる贅沢な体験なのです。
次に、誰もが思い思いに楽しめる「万人受け」!
小さな子どもから高齢者まで、男女問わず楽な姿勢で、思い思いに収穫の喜びを味わえることでしょう。それも、温室の中や雨よけの屋根に覆われている場所ではない、青空の下で開放感に浸りながらなのですから。
3つ目は、自分の成長を実感できる「達成感」!
最高の瞬間の果実ばかりを摘み取れるようになるには、経験が必要です。回数を重ねる度に、どんどん上達していく自分を知るのは、誰でもうれしいことですよね。ブルーベリー狩りデビューの日でも、成長は実感できますからご安心ください。
それでは、他の果物狩りにないブルーベリー狩りならではの体験価値は何なのでしょうか?
三鷹市の吉野果樹園にお邪魔して、裏ワザを含めて根掘り葉掘り聞いてきました。
吉野果樹園でぶつけた「誰もが知りたい10の疑問」
吉野果樹園は、東京の三鷹市の住宅街のなかに観光農園を3ヶ所構えています。シーズン中で、一度にもっとも多くの種類の品種を味わえる7月初旬を狙って、他では聞けないお話を伺ってきました。
吉野果樹園が、庭木の生産からブルーベリー生産に切り替えたのは約30年前。それ以来無農薬栽培にこだわり続けてきています。驚いたのは、園内に雑草がまったく生えておらず、隅から隅まで手入れが行き届いていること。これなら小さな子どもから、足元に自信のなくなったお年寄りまで安心してブルーベリー狩りを楽しめます。さらに、自分が摘んでいる木が何の品種がすぐに分かるように、品種名の書かれた看板が通路側に見やすく配置されているのもうれしいポイントでした。

無茶ぶりも含めた「誰もが知りたい10の疑問」に対して、ひとつひとつ丁寧に答えてくださったのは、ブルーベリー園としては2代目の吉野裕作さんです。

Q1:まずは、ブルーベリー狩りならでは魅力について教えてください。
吉野さん(以下、吉野):それはもう何といっても、ブルーベリー本来の本物の味を体感できることに尽きます。お店で買ったブルーベリーよりも、自分で摘み取ったものの方が絶対においしいです。ブルーベリーは樹上完熟型のフルーツなので、追熟しておいしくなることはありません。摘み取った時が最高で、あとは味が落ちていく一方なんですよ。
果実が小さいブルーベリーは、量を収穫するのに手間と時間がとてもかかります。短時間で収穫しようとすると、どうしても完熟していないまだ酸っぱい果実も混ざってしまいます。海外産は特にこの傾向が強いですね。自分で選んで摘み取れば、ほとんどすべてが完熟した実になるわけですから、その差は歴然としています。「ブルーベリーってこんなにおいしかったんだ!知らなかった!」ブルーベリー狩りが初めてのお客様は、大抵こうおっしゃいますね。
そうそう。品種による味の違いを何度も楽しめるのもブルーベリーならではでしょう。たとえば1週間後にまた来ていただいても、前回とは違う品種を味わっていただけます。こういう体験は他の果物ではなかなかできないと思います。

Q2:そもそもブルーベリー狩りに来るお客さんの数は増えているのでしょうか? また、リピーターはどのような方たちなのでしょうか?
吉野:明らかに増えてますね。僕が就農した頃はまだ摘み取りのお客さまは少なくて、観光農園としてはさびしい感じでした。それがいまでは農協出荷はわずかで、生産した分の大部分が摘み取りのお客様向けに変わりました。毎回1~2㎏、ごっそり取って帰られる方もいらっしゃいますよ。
リピーターのお客様は、親子連れ、シニア世代のご夫婦、女性おひとりが多いです。シーズンを通してずっと、週に2回来てくださる方もいらっしゃいます。東京からだけではなく、神奈川や千葉からも自家用車で来てくださいます。
特別な準備は何も必要ありません。雨が降ってきた時には、傘をさしての摘み取りだけはお断りしています。念のために、レインコートをご用意いただけますと安心です。

Q3:栽培している品種数を教えてください。
吉野:試作を兼ねている品種を含めて70強です。ブルーベリーは、1品種当たりの収穫期間がせいぜい2週間と短いためです。
当園では、いつブルーベリー狩りにいらっしゃっても、5品種以上は食べ比べしていただけるように、生産する品種を選んできています。もちろん同時に、シーズンを通じてなるべく収穫量が一定量になることも狙っています。内訳はラビッドアイ系が15品種と、ハイブッシュ系の方が品種数は圧倒的に多いです。

Q4:消費者の立場で、ラビッドアイ系とハイブッシュ系の違いを気にする必要はありますか?
吉野:ご自身で栽培されるのではなく果実を食べるだけでしたら、まったく気にする必要はありません。最高のタイミングで摘み取った果実でしたら、どれもおいしいですし、ラビッドアイとかハイブッシュとかは気にせずに、色々な品種を食べ比べて自分好みの品種を見つけていただければと思います。
両者の特徴を簡単に説明しますと、早く熟しシーズン前半に収穫できるのがハイブッシュ、後半に収穫できるのがラビッドアイです。栽培面では、暑さに弱くデリケートなのがハイブッシュで、暑さに強く丈夫なのがラビッドアイになります。
味の大まかな違いは、ハイブッシュは香りが豊かで口当たりのよい品種が多く、ラビッドアイは濃厚な甘さの品種が多いといった傾向があります。
Q5:ブルーベリー狩りは何歳ぐらいのお子さんから楽しめますか? また、どんなところに子どもたちが喜んでいるかも教えてください。
吉野:1歳半ぐらいから、もうひとりで楽しんでいますよ。自分で立って歩ければ大丈夫です。小さいお子さんでも、実による味の違いはちゃんとわかるみたいですね。ひとりでおいしい実がどれか探すようになります。
ブルーベリー狩りには子どもの方が有利な点もあるんです。大人の目線はどうしても上からになるじゃないですか。でも背の低い子どもは木の下に潜って収穫しますから、大人が気づかなかったところに隠れたおいしい実を見つけちゃうんですよ。子どもにとってはブルーベリーの森の中で収穫しているような感覚になるらしく、この冒険気分も楽しいみたいです。


Q6:子ども向けはよくわかりました。それでは大人向けの楽しみ方だとどうなりますか?
吉野:それはもう、自分が一番好きな味の品種を見つけていただくことと、最高の味の状態の果実ばかりを収穫できるようになっていただくことです。ブルーベリー狩りは、果物狩りの中でも特に目利き力が問われるんじゃないかと思います。
シーズン中に何回も来ていただければ、どなたにも自分の目利き力が上達していく達成感を味わっていただけます。ぜひ、自分好みの推し品種を見つけていただきたいですね。
Q7:吉野さんのおススメ品種や推し品種は何になりますか?
吉野:おススメ品種は、6月は「レガシー」、7月前半は「タイタン」「アラパハ」、7月後半は「オクラッカニー」「ティフブルー」、8月前半は「ブライトウェル」「ティフブルー」といったところでしょうか。味の好みは人それぞれ違いますし、あくまでも万人受けする味という観点で選びました。


Q8:自分で摘み取ったブルーベリーの最高の食べ方を教えてください。
吉野:それはもう、摘み取ったばかりの生のブルーベリーをそれだけで食べていただくのが一番です!
農園で摘んですぐに食べた時と冷蔵庫で冷やした後に食べた味の違いも、しっかり楽しんでいただいて。それから、半解凍したブルーベリーも真夏にはたまりません。
ブルーベリーはたくさん食べても、口の中が甘くなりすぎることがない点もよさのひとつだと思います。
たくさん収穫された場合の保存方法は冷凍するしかありませんけど、長期間の冷凍保存はあまりおススメしません。香りがどんどん薄くなっていってしまうからです。冷凍保存される際にも、できるだけ1ヶ月以内に召し上がってほしいです。
また、香りをできるだけ落とさないようにするには、半解凍の状態で食べるのコツですね。完全に溶かしてしまうとドリップが出てきて、ドリップとともに香りが失われてしまうんです。
僕は冷凍したブルーベリーは、いつもスムージーにしています。半解凍したブルーベリーと、バニラアイス、ヨーグルト、ハチミツ、氷を入れて、あとはガーっとで。
Q9:最後に、ブルーベリー狩りを人一倍楽しむためのマル秘情報を教えてください。
吉野:マル秘情報ですか!
これはあんまり広めたくはないんですけど、ひとつは平日8時の開園時間に来ていただくことですね。平日は土日休日ほどお客さんが多くないため、ゆったり摘み取れます。
また、朝一番だと最高の実を見つけやすいんです。昼間にいらっしゃると、どうしても朝のお客さまが摘み取った残りの中から探すことになっちゃいますからね。
Q10:まだ何か出てきそうなので、あともうひとつだけ(笑)。ごく一部のリピーターだけがやっている裏ワザ的な楽しみ方はありませんか?
吉野:裏ワザといわれても・・・(苦笑)
あっ、ありました!レーズン狙いのお客様がいらっしゃいます!レーズンとは、雨が降らずに果実内の水分が足りなくなって、しおしおになってしまった実のことです。このような実は甘味が一段と増すんです。これ目当てにいらっしゃる方がいました。日照りが何日も続いたあと、時期としては7月下旬が狙い目です。
「誰もが知りたい10の疑問」はいかがでしたでしょうか?
ブルーベリー狩りに行ってみたくなりましたでしょうか?
一粒で気づかせてくれる本物の味、品種の違いによる味の個性、都会で手軽に味わえる非日常体験。東京にお住まいの方であれば、ほんの少し足をのばせば、都会の喧騒を忘れる癒しのひとときが待っています。
さあ、いますぐ、あなたも本物のブルーベリーの味に出会いに行ってみませんか? 平日の朝一番なら、最高の状態の実を独り占めできるチャンスです。
吉野果樹園の近くには、神代植物公園や蕎麦で有名な深大寺、国立天文台に三鷹の森ジブリ博物館などがあります。これらの見学と組合わせ出かければ、さらに夏の思い出が深まること間違いなしです。