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周防大島の自然が育む、体と心にやさしい観光農園「みらいガーデンファーム」

藤永瞳

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藤永瞳
元パティシエ/3児の母

山口県周防大島にある「みらいガーデンファーム」は、2010年に移住してきた山形岳史(やまがたたけし)さんがスタートさせた農園です。今ではぶどうとブルーベリーを中心に、レモンやいちじくなど、たくさんの果物が実る豊かな農園ですが、ここまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。

今回は、みらいガーデンファームを訪ね、果物づくりに込めた想いと日々の取り組みについてお話を伺いました。

みらいガーデンファーム(山口県周防大島)

農園づくりの過程で一番苦労したのは、農地探しだったといいます。移住してきた山形さんには、周防大島に親戚や後援者がいるわけでもなく、いきなり農地を貸してくれる人を見つけるのは簡単ではありませんでした。
すでに他の農園として使われていたり、条件が合わなかったり……。そんな中、ようやく見つけたのが現在の場所です。8人の地権者に順番に話をしてまわり、ようやく農地として使えるようになりました。

しかもこの土地、山形さんが譲れない条件である、「ある程度の広さがある」「国道から近い」「将来、農地を広げられる」の3つをすべて満たしていました。さらに、段々畑を登ると瀬戸内海が目の前に広がる最高のロケーション。苦労の末にたどり着いたのは、まさに“理想の場所”だったのです。

袋がけしたぶどう(みらいガーデンファーム)

ぶどうは病気や害虫の影響を受けやすく、通常は農薬を多く使う果物。それでも山形さんが省農薬栽培を選んだのは、実体験からです。

ある農園で見た目も味も優れたぶどうを食べた際、たくさん食べると体調を崩すことがあったといいます。一方、有機栽培のぶどうでは、どれだけ食べても不調は出ませんでした。農薬が原因とは断言できませんが、「できるだけ体にやさしい果物を届けたい」という想いが、今のスタイルにつながっています。

省農薬での栽培は、手間がかかりリスクもありますが、農薬の量や種類を見極めながら、日々工夫と試行錯誤を続けています。そんな丁寧なものづくりの姿勢は、果物を通じて自然と消費者にも伝わっているのでしょう。この取り組みに共感した人の輪は少しずつ広がり、着実にファンを増やしています。

ブルーベリー狩りの様子(みらいガーデンファーム)

みらいガーデンファームは、ぶどうやブルーベリーの果物狩りが楽しめる観光農園。園内の直売所では、採れたての果物の販売も行われています。

山形さんが観光農園というスタイルを選んだのは、単に果物を出荷するだけでなく「自分たちの手で直接届けたい」「お客さまとつながる場所を作りたい」という思いがあったからです。対面販売では、果物の魅力はもちろん、栽培のこだわりやストーリーも顔を見て伝えることができます。山形さんは一組一組のお客様を丁寧におもてなしすることで「みらいガーデンファーム」の名前を覚えてもらい、また来てもらうことが将来的な財産になると考えています。

実際に、「みらいガーデンファームのぶどうをまた食べたくて」と何度も足を運ぶファンも少なくありません。自分で味わって「美味しい」と感じた人が、今度は大切な誰かに贈り物として選ぶ。そんなファンの輪が、ゆっくりと、しかし確実に広がっています。

みらいガーデンファームで育てた果物を使ったジャムやドライフルーツなどの加工品は、すべて農園で手作りされています。オンラインショップもあり、遠方の方でも気軽に農園の味を楽しむことができます。

マイヤーレモンのマーマレードの写真(みらいガーデンファーム)

例えば、マイヤーレモンのマーマレードは、まろやかな酸味と華やかな香りが広がる一品です。パンに塗るのはもちろん、ドレッシングやお菓子づくりなど使い道が多く、あっという間に食べ切ってしまいそう。

加工品づくりは、果物の新しい楽しみ方を提案するだけでなく、農閑期の冬にも雇用を生み出すという大切な役割があるといいます。ぶどう農園では冬場の作業が限られるため、繁忙期のみの短期雇用にとどまるケースも少なくありません。

しかし、山形さんは「できるだけ長く関わってくれる人を大切にしたい」という思いから、年間を通じて働ける環境を整えるために、加工品製造にも力を入れているのです。手間ひまかけて作られた品々は、今では多くの人に愛され、農園を支える重要な収入源となっています。

レモンの実が育っている様子(みらいガーデンファーム)

みらいガーデンファームは、理想の農園づくりを目指して挑戦を続けています。今後はレモンの生産量を増やすため、200〜300本の苗木を植える計画があるそうです。

そして「中途半端なものは出さない」というこだわりは今もこれからも変わらず、「おいしかったからまた食べたい、そして誰かに贈りたい」と思ってもらえる品質を追求しています。こうした姿勢が、多くの人の笑顔や信頼につながり、農園の成長を支えていることは間違いありません。

取材を通して、山形さんが苦労も含めてぶどうづくりを楽しんでいる姿がとても印象的でした。美しい景色と新鮮な果物、そして農園主の温かく力強い思いに触れられる、訪れる価値のある素敵な農園です。ぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。


〒742-2101 山口県大島郡周防大島町大字西三蒲2053-1
TEL:090-3979-1371
開園時期:ブルーベリー園 7月下旬~8月下旬 / ぶどう園 8月中旬~10月上旬(詳しくは公式サイトをご確認ください)


藤永瞳

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元パティシエ/3児の母

休日に子どもたちとお菓子やパン作りを楽しむ元パティシエ。全国各地の美味しい果物をお取り寄せするのが何よりの贅沢です。忘れられない果物は、沖縄の道の駅で買ったミニマンゴー!

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