TVやSNSやYouTubeなどで、医師や栄養士の方が「フルーツは甘いから、食べ過ぎに注意しましょう」と発言するのを耳にしたことはありませんか?
ところがフルーツの食べ過ぎについて、長期間調べた「ヒトでの実験」は存在しません。なので、あまのじゃくな私は33歳の時、自分のからだで生涯、フルーツの人体への影響を調べることを決意。以来、2009年9月28日から実験的に、肉も魚も、卵や乳製品も、マメもイモもキノコも、パンもご飯も、根菜も葉菜も茎菜も花菜も、お菓子も全く食べていません。また水もお茶もコーヒーもお酒も全く飲んでいません。飲食するのは、フルーツを中心に99%以上、果実だけです。ただし、あくまで自己責任の人体実験です。とても危険なので、くれぐれも真似はなさらないでください。
そんなバカな!バナナやイチゴが野菜?
世間では「果実」と「フルーツ」と「くだもの」は、だいたい同じような意味で使われています。ただし、○○果実店というお店があったとしたら、昔ながらの雰囲気のお店なら「くだもの屋さん」、今時のお店なら「フルーツ屋さん」と呼ばれるように、うまく使い分けられていることもあります。
一方で、バナナなどは、組織や団体によって、果実・フルーツ・くだもの・野菜とバラバラに分類されています。
出典:金浜耕基「園芸学」文永堂出版、伊藤三郎「果実の科」朝倉書店、野菜の区分について教えてください。/農水省Webサイト、国民健康栄養調査/厚労省、日本食品標準成分表/文科省、小売物価統計調査/総務省
例えば、野菜とフルーツを扱う青果卸売市場では、野菜を「蔬菜(そさい)」、フルーツ類を「果実」と称します。またスーパーマーケットの青果売り場は、たいてい「野菜」コーナーと「フルーツ(果実)」コーナーが隣り合っています。ちなみにバナナは、フルーツ(果実)コーナーに陳列されます。
園芸学では、木であるか草であるかに重きが置かれ、木本(もくほん)果実は「くだもの」、草本(そうほん)果実は「野菜」に分類されます。したがって、園芸学的にはバナナやイチゴやメロンなどは野菜です。
農林水産省は、生産者の視点に立った栽培方法に重きを置いています。なので、木本果実(果樹農産物)であるリンゴ・ミカン・アボカド・クリなどと、2年以上栽培する草本果実のバナナやパイナップルなどを「果物(くだもの)」、1年未満しか栽培しないイチゴやスイカなどの草本果実を「果実的野菜」と呼んでいます。
厚生労働省や文部科学省は、リンゴやミカンやバナナ、イチゴやスイカ、アボカドやレモンなどを「果実」、クリやカシューナッツなどを「種実」と呼びます。総務省は、リンゴもバナナもイチゴもアボカドもクリも「果物(くだもの)」と呼びますが、リンゴやバナナやイチゴなどの加工飲料は「果実飲料」と呼びます。
小学校でフルーツの授業をすると、小学生から「(テレビやYouTubeでは)イチゴやメロンは野菜だと言われてたよ」と指摘を受けることがあります。実際、テレビ番組で「イチゴはフルーツか野菜か?」というクイズが出されると、「答えは野菜です」といった解答がしばしばなされています。確かに「園芸学的」には、草本植物であるイチゴやメロンは野菜です。しかし、大半の消費者は、イチゴやメロンは野菜ではなく「フルーツ」と認識しています。同じ言葉でも、このように個々人で認識に違いがあると、将来的に誤解や混乱が生じる恐れがあります。
トマトはフルーツ?野菜?驚きの裁判結果
「果実」とは生物学的には、めしべの膨らみである「子房(しぼう)」や、花の付け根の「花托(かたく)」などが大きくなり、中に「種」が入る器官のことを言います。
「くだもの」の語源は、奈良時代初めの西暦712年に成立した、日本最古の歴史書である古事記に登場する、木の神様「ククノチ」と関連があります。つまり「くだもの」とは木に実るものという意味です。実際、平安時代には、木に実る食用果実を「くだもの(木だ物)」、イチゴやウリなどの草に実る食用果実を「草くだもの」と呼び、使い分けられていました。また漢字の「果」も果樹の象形文字です。
「Fruit」の語源は、大地からの恵みに関して、産物・享受・楽しみ・収益・果実などの意味を持つラテン語のL.fructusです。現在の英語の「Fruit」には、産物・収穫・成果の他に、上述した生物学的な意味での「果実」、さらに「デザートフルーツ(デザートとして食される果実)」の意味もあります。ところが、Fruitに果実とデザートフルーツの両方の意味があるが故に、過去には裁判にまで発展してしまいました。
南米原産のトマトは、大航海時代に欧州にもたらされました。品種改良が進められた結果、19世紀の終わり頃には、アメリカの一般家庭の食卓にも並ぶようになりました。1883年、チェスター・A・アーサー大統領は関税法に署名。輸入Fruitは義務付けられなかったのに対し、輸入野菜には関税が義務付けられました。結果、輸入トマトは、関税が徴収されることになりました。ところが、ニューヨークの輸入業者が「トマトは植物学的にはFruit」として、1892年、ニューヨーク港の関税徴収官を相手取り、支払った関税の払い戻しを求める訴訟を起こしました。しかし翌年、最高裁判所によって「トマトは野菜」であるとの判決を下されました。判決理由は、「確かにトマトは植物学的には果実だが、フルーツのようにデザートとしてではなく、キュウリやカボチャなどと同じように食事中に食べられて、世間一般では野菜とみなされているから」というものでした。
果実・フルーツ・くだものの定義
※著者による分類
フルーツが主食の私は、生物学や言語学などの観点から、「果実」「フルーツ」「くだもの」を下記のように定義しています。
①果実
広義の果実:種や果皮を含む、植物の実。
広義の食用果実:広義の果実のうち、食べられるもの。果菜・フルーツ・くだもの・種実・穀類・豆類の総称。
果実:広義の食用果実から穀類や豆類を除いたもの。
狭義の果実:果実から果菜と草本種実を除いたもの。スーパーマーケットのフルーツコーナーに陳列されている果実は、おおむねこれに当たる。
②フルーツ:加工せずともデザートになる果実。つまり生食ができて、熟すと甘い、または甘酸っぱい果実。
③くだもの:木に実る食用果実。
④フルーツ類:フルーツと、種実以外の果物を合わせて呼ぶときの呼称。
上の定義に従えば、リンゴやミカンは、フルーツであり果物(くだもの)です。でもイチゴやメロンやスイカは、フルーツだけど果物(くだもの)ではありません。アボカドやレモンやクリは木に実るけれど、水分が少なかったり、それほど甘くなかったりするので、果物(くだもの)だけどフルーツではありません。フルーツであるバナナは、生物学的には草だけど、木のような外観をしているため果物(くだもの)とも言えます。
果菜とナッツ
果実には、フルーツや果物の他に、「果菜」と「種実」も含まれます。
野菜のうち、草に実る果実であるトマトやキュウリやピーマンなどは「果菜」と呼ばれます。キュウリやピーマンなど緑色の果菜は未熟なものが多く、それほど甘みを感じないため、フルーツとは呼ばれません。ただし、フルーツトマトや、熟して赤くなった赤ピーマンやパプリカなどは、水分が多く甘みもあります。生でそのまま食べれば、人によってはフルーツに近いなと思うかもしれません。
※著者による分類
主に種を食用とする果実のうち、「穀類」と「豆類」を除いたものが「種実」と呼ばれます。さらに、クリやアーモンドなどの「木本種実」とヒマワリやゴマなどの「草本種実」に分けられます。種実のうち、ゴマや麻の実のような粒が細かい種実を除いたものを、一般的には「ナッツ」と呼びます。また、ピーナッツとも呼ばれるように、普通、ナッツと認識されている落花生は、植物学的には「豆類」であり、種実類ではありません。
蒸し栗を除けば、種実類は一般的には水を用いず、煎ったり焼いたりして食べられることが多いです。クリも焼き栗のように焼いたり、天津甘栗のように煎ったりしても食べられます。「穀類」について、トウモロコシは焼いても食べられますが、コメや小麦などのように、大抵は加水加熱して食されます。「豆類」について、節分の豆のように煎って食べることもありますが、大抵は加水加熱して食べられます。
いずれにせよ、「果実・フルーツ・くだもの」などの用語がきちんと整理できていると、話し相手が、果実のことを言っているのか、フルーツのことを言っているのか、くだもののことを言っているのか、注意しながら聴くことができます。結果として、誤解や混乱を減らすことができるので、フルーツ好きの方やフルーツを扱う仕事に従事している方にはとてもオススメです。
私が食しているもの
冒頭に、飲食しているのは、フルーツを中心に99%以上、果実だけと述べました。上の定義に照らせば、フルーツを中心に99%以上、「果実」だけです。ただし、穀類であるトウモロコシや、豆類である落花生は食べません。
フルーツの体への影響を調べるため、当初はフルーツだけで実験を始めました。しかし、体がどうしようもなく欲したため2か月後には塩を摂り始め、2か月半後にはタンパク質などの栄養面を考えて、木本種実と果菜を食べ始めました。ただし種実類は消化が悪いため、数ヶ月間食べるのを止めたり、次の数ヶ月間は食べたりを繰り返しました。2014年2月からは、スイカやメロンの外皮やキュウリなどの果菜をぬか漬け(自家製)にして食べ始め、塩を直接摂ることは無くなりました。草本種実については、2017年10月からゴマや黒胡椒を、不足しがちなミネラルのセレンを補うために、2018年5月からヒマワリの種を食べ始めました。
必須栄養素のうち、果実では摂れない栄養素が、ヨウ素・ビタミンB12・ビタミンDの3つです。このうち、ビタミンDは太陽(紫外線)を浴びることで合成できます。(ただし、緯度の高い地域の冬季は、紫外線量が少ないので注意が必要です。)そこで、ヨウ素摂取のために2018年4月からアオサを、ビタミンB12も摂取するために2021年9月からノリも摂っています。
したがって、果実ではない1%未満とは、自家製のぬか漬けからの塩分とヌカ、自家製の梅の白干しからの塩分、そしてサプリメント的に摂っているアオサとノリのことです。
以前は非加熱にこだわっていたので、木本種実を除けば加熱したものは食していませんでした。しかし、フードロスを減らしたいと考えていたため、2017年10月からレンジで、果実の皮や芯をふんだんに入れた、果実だけの無水ミネストローネ(トマトベースのスープ)を作るようになりました。お蔭でフードロスは大幅に減らすことができました。上述したアオサは、この無水果実スープに入れています。
安易な真似は危険
私は33歳だった2009年9月に、フルーツ食実験を始めました。教えてくれる人も参考になる人もいなかったので命がけです。その後、栄養学を抑えつつ、フードロスを減らすことも考えながら、試行錯誤で15年続けてきました。
私の場合、毎日、すべての飲食物の重さを計り、後で摂取栄養素の計算を行っています。1回のフルーツの適切な食べ方を知るために、採血するなどして、食後血糖値の変化も詳しく調べています。もちろん、年に1度の健康診断や不定期の血液検査を続け、健康状態を把握しています。だから「真似できそう」と安易に思うのは非常に危険です。
なにより、家族や友人と外食したくても、たいてい一緒に食べられるものがありません。だから、私のような極端なフルーツ食生活は全く勧められないです。
ただし、健康日本21(第3次)で、厚生労働省が推奨するように、健康のために毎日200gは、フルーツを食べることを心掛けていただきたいです。1度に200gを食べなくても、1日のうちで何回かに分けて、200gを食べてもらえれば大丈夫です。200gの目安としては、Sサイズの温州ミカンなら4個、普通サイズの、リンゴなら半分強、モモなら1個、メロンなら2切れ、キウイなら2個、バナナなら2本くらいです。
※著者による規定