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幻の桃、“飛騨のたからもも”を求めて夏の飛騨高山へ

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桃って本当に魅力的なフルーツですよね。香り、色、形、質感、味のどれも素晴らしく、品種も様々で、色々な種類が楽しめるのも特徴です。
桃の旬は、6月頃から9月頃までとされていますが、7月は出荷が最盛期!

生産量としては福島や山梨が有名ですが、実は岐阜でも美味しい桃が作られているんです!
今回は、希少な“飛騨のたからもも”を求めて、岐阜県の飛騨高山へ行ってきました。
飛騨の山間部の道のりは、木々が青々と茂り、至る所に水が流れ、とても気持ちのいい場所でした。

飛騨高山の風景

お話を伺ったのは、つむぎ果樹園代表の前坂治臣さん。岐阜県の飛騨高山にある、桃専門の果樹園でオリジナルブランドの桃、“飛騨のたからもも”を作っています。

芳醇でジューシー。とろけるような甘さの桃ですが、ハズレに当たることも少なくないですよね。時にはガッカリされることもあるかと思います。

農産物なので、もちろん“絶対”はありませんが、“飛騨のたからもも”の安定した美味しさには理由がありました。

つむぎ果樹園代表の前坂治臣さん

—— 桃専門で販売まで全てご自身でというのは珍しいと思うのですが、そうなろうと思ったきっかけはありますか?

この地域だとりんごも質のいいものがとれるので、以前はりんごもやっていたのですが、販売するとなるとちょっと難しい部分があって…。青森とか長野に勝る何かがなかったというのもありますが、桃は逆にそれがあるというところは確信していました。

—— それはどういったところですか?


飛騨という地域柄に影響されるんですが、桃の糖度ですね。全国の県の試験場で、桃の登録検査を一様にするんですね。そのデータ上で、糖度が平均して飛騨が一番高い地域だったので。地域の気候と土、水などで、環境だけで糖度での差別化できる条件が整う。

この美味しいものができる環境と、観光地として人が集まる場所、地域として魅力があるところにフォーカスして、“飛騨のたからもも”としてブランディングしました。

—— ブランディングが必要だと感じたのはなぜですか?ロゴマークや桃の箱のデザインまで、デザインが行き届いていて素敵です。

(市場出荷してしまうと)味が価格に反映されないという課題を感じていました。実家が農家だから農業やったみたいな、そういうのも嫌で。やっぱり自分で新しくやっていきたいって思いもあったので。桃をブランディングしたのは、いい桃を作っているだけじゃなくて、選別をして、ユーザーが求めている形に変えたことに価値があると思っています。 親がやってた販売もありますけど、そこを大事にしつつも、次の世代を育てられるような仕組みも考えて、育てていけたらいいなって考えています。

—— 販売の仕組みですか?

他の農家さんからも、いいものを作れば選別してこちらで高く買い取って売るというような仕組みができるようにしたいと考えています。今後桃をやりたい若い世代が来た時のことも考えて。

あとは、周りの高齢化した農家さんが、やっぱり手が足りなくて、収穫はできるけど自分で選別したりする時間がないと。だったらもう収穫したものをそのまま持ってきてもらって、買い取るんでっていうようなことは数年前からやっています。

選別されて並べられている桃たち

—— “飛騨のたからもも”の選別は、どういった基準があるんですか?

“飛騨のたからもも”の基準は、まず、厳選した秀品の中で1玉250g以上です。そして、糖度は11度が最低で、13度、15度、18度というようになっています。11度ぐらいなら、食べ慣れてない方であれば、大体みんな甘い桃だなと感じます。そして、13度ぐらいになると、かなり甘い桃だなと。さらに、15度ぐらいになると、うわ〜これは…!!となってきますね。

ただ、美味しさとしては酸味とのバランスとかもあるんですけど、この基準を満たしたものを出せるようにしています。

桃は、一番ハズレがあるフルーツだなんて言われてるんで、それを保証とまでは言わないですが、確実なものが出せるようにしています。やっぱり糖度が高いものの方が喜ばれるので。

飛騨のたからももの糖度測定の様子
厳しい“飛騨のたからもも”の基準に達した桃

—— どれくらいの品種の桃を作ってるんですか?

当初は、品種が2つか3つに偏っていたので今それを増やしていて。今自社で作っている品種の一覧なのですが、桃カードも作っています。

桃の品種一覧の桃カード

—— すごい!かなりたくさんの品種がありますね。特に注目の品種はありますか?

昨年、品種登録したオリジナル品種の「つむぎ」です。

—— これはどうやって生まれた品種なんですか?

これはですね、この昭和白桃という品種から生まれました。飛騨地域のものではないんですけど、元々は山根白桃という品種で登録されていました。愛知県では愛知白桃という名前で。岐阜県では昭和白桃と昔から呼ばれています。この昭和白桃を接ぎ木したところ、突然変異で生まれました。

—— え!どうして突然変異したってわかるんですか?

10年ぐらい前に接ぎ木をしたんですね。そこから普通のものができると思って作ってたんですけど、なんかやたらこれだけ色がつきやすい。で、もともとその色がつきにくい品種だと、シートを反射させて色付けをするんです。ですが、これ、なんかやらなくていいな。楽だな。これ増やそうかなと思っていて。食べても明らかになんか違うなと感じました。


—— 昭和白桃とは違うぞと?

それで、いいものができる割合も高かったので、これ、もしかしたら品種登録したらいいんじゃないかと。それで5年くらい前から、県の方に色々相談していて、色々な試験をして、昨年登録されました。桃は結構突然変異が多いんです。例えば、食べたの種を植えると、完全に違う品種のものが出てくる可能性も高いです。

—— めちゃくちゃいいとことばかりですね!「つむぎ」は。それにしても、当然変異って不思議ですね〜。

白い果肉のものから黄桃が出たりすることもあるんですけど、既存の品種と本当に明らかな差がない限りは、品種登録っていうのは基本的にはしないですね。結構費用もかかりますし、時間もかかるので。

—— 桃そのものだけでなく、加工品も作られていらっしゃるみたいですね。特にアイスが気になっていて…。ビジュアルもすごく可愛いくて…お話ききたいです!


アイスは、物々交換で桃を送ったアイス屋さんがアイスにしてくださって。桃をそのままたっぷり使っているので、本当に“桃”っていう感じに仕上がっています。
品種も色々あって、果肉によって色もピンクになったり白っぽくなったりしています。

—— 今後、アイス以外にも何か作られる予定はありますか?

商品名は“つむぎのももがたり”っていう名前で出したんですけど、今後シリーズを出そうと思っていて、今はドリンク系を開発したりしています。
桃はシーズンが短いので、それを別の時期にも楽しめる商品を考えていて。桃よりも桃らしく食べられるものを開発しています。

—— 加工品を作り始めたのは、なにかきっかけがあるんですか?


生の桃をそのまま売った方が絶対に儲かるんです。けど、加工品を作っていれば。何かあったとき、災害があったり、商品としていいものが出なかったときのリスクヘッジにもなります。その辺のリスクまで考えて生産をしているかどうかが、今後の成長に大きく関わってきますね。

今後の展開について語る前坂さん

—— 桃のブランディングから販売の仕組みづくりや加工品作りまで、色々なことを精力的に取り組まれていますね。今後新しく考えていることはありますか?


今作ってる実店舗で、桃の販売もするんですけど、全国の農家さんのフルーツをちょっと仕入れて、他の地域のフルーツを知ってもらおうかなと思ってます。ECサイトでも告知して、色んな客さんに買ってもらえたらいいなと。今はSNSを通して色々な農家さんのところへ行って、お話をしています。

—— いいですね。つむぎ果樹園さんの、農産物のセレクトショップみたいな感じですね。今度の展開も楽しみです!

様々な取り組みを通して、フルーツをより身近に、より価値あるものにしていけたらなっていう思いはあります。まだまだやりたいことは色々あるんですけど、社員からは、やっぱり全部はできないから整理してよ、とは言われていますね。(笑)

つむぎ果樹園通販サイトへ

つむぎ果樹園 通販サイト

桃の質はもちろん、パッケージデザインまで可愛らしいのがつむぎ果樹園さんの素敵なところ。ギフト用にも重宝しますよ。品種を示す桃カードも入っています!

あとがき

伺ったのは7月初旬 。桃の収穫スタートの時期でした。羽田から富山まで空路の後、そこから車で1時間半ほど走って、つむぎ果樹園さんの圃場や選果場のあるエリアにやってきました。 つむぎ果樹園さんの桃は、何度か通販サイト経由で購入して、その味の確かさに驚かされていたので、ついにここまで来たぞ…!という気持ちでいっぱいでした。 桃作りつにいてはもちろん、販売の方法やこれからの展開など、注目ポイントがたくさんあってとても充実した取材時間でした。

飛騨のたから桃のプレミアムパッケージ
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