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雨の中の収穫戦ー青森りんご農家の舞台裏とは

なついろ

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なついろ
嫁ぎ先はりんご農家の青森ライター

りんご農家にとって1年で最も忙しく、やりがいを感じる時期。
青森県では、りんごの収穫時期を迎えました。

農家さんは冬のあいだ、日光や養分を実に集中させるために古い枝や不要な枝を切り落とす「枝切り」という作業から、りんごを大切に育ててきました。
品種ごとに収穫時期は異なりますが、早ければお盆頃から収穫がスタートしていて、11月中旬まで一家総出の戦いが続きます。

りんごの重みで枝が下がっている

取材に伺ったのは10月下旬。
小雨が降るなか、農家さんは収穫の真っ最中でした。

夏から収穫できる早生(わせ)種、初秋の中生(ちゅうせい)種、そして晩秋の晩生(ばんせい)種。
りんごの収穫は、それぞれの品種が最高の状態で実る時期を待って行われます。

今回は、晩生種である「ふじ」の収穫を取材しました。

木々を見上げると、赤く色づいたりんごがたわわに実っています。
いよいよ収穫の始まりです。

リンゴ畑の傍に軽トラックが停まっている写真。リンゴの木の近くには収穫用の木箱が並んでいる。

この日、農家さんたちは朝7時から作業をスタート。
早い時は6時台から始めることもあるそうです。

軽トラックや自家用車に分乗して畑へ向かい、作業を行うのは75歳以上の高齢者4人。
1日に収穫する量は、木箱で80〜100箱にものぼります。

秋になり、日の落ちる時間が早くなったため、16時頃には作業を終えなければなりません。
17時頃には辺りが暗くなり、最近はクマ出没の心配もあるため、薄暗くなれば切り上げざるを得ないのです。

限られた時間の中で、大量のりんごを収穫する。
それも小雨が降るなか、高齢の農家さんたちが休むことなく働き続ける現場は、想像以上に過酷なものでした。

りんごを収穫する様子

農家さんは慣れた手つきでりんごをもぎ取り、ひょいひょいとカゴに入れていきます。 簡単にりんごをもいでいるように見えましたが、収穫するときにはいくつか注意点があるそうです。

・つるを残して収穫する:人差し指をりんごのつるに添え、持ち上げるように優しくもぎ取るのがコツ。つるが抜けると、商品価値が極端に低くなってしまうそう。

・力加減が命:完熟したりんごは、力を入れずともポロッと取れる。無理に引っ張ったり、何度もねじるのはNG。

・カゴに入れるときも慎重に:ずっしりと重いりんご同士がぶつかるだけでキズがつく。カゴに入れるときは静かに、丁寧に入れる。

・落ちたりんごは別扱い:土に触れてしまうと「土壌菌」が付着するため、落ちたりんごはほかのりんごと混ぜない。

収穫するときにハサミは使いません。
軍手をはめた手で、ひとつひとつ丁寧に収穫していきます。

熟練の農家さんは、1個1秒以内というスピードでりんごをもいでいきます。
体力と集中力が求められる作業を、朝から夕方まで続けるのです。

かごを片手に梯子にのぼり、木の上部に実ったりんごを収穫する様子

木の上部に実っているりんごは、ハシゴに登って収穫。
片手にカゴを持ち、もう片方の手でりんごをもぎ取っていきます。

ハシゴに登っているのは、高齢の農家さん。
見ているだけでヒヤヒヤする、危険と隣り合わせの作業でした。

りんごを収穫用のかごから木箱に移す様子

手カゴに収穫したりんごは、畑内に設置した作業場で木箱に移します。
1日の収穫が終わると、80〜100箱にもなる木箱をトラックに積み込み、自宅倉庫へ運びます。

倉庫は普段、車庫や物置として使っているスペース。
りんごの収穫期には、収穫したりんごの保管や選果をする場所として使っているそうです。

りんごとボトルに入ったりんごジュースが並んでいる写真

選果によって市場に出せないと判断されたりんごは、決してムダにはなりません。

筆者の周りの農家さんでは、加工業者に依頼してジュースやジャムにしてもらいます。
獲れたてのりんごで作られたジュースは味が濃く、本当に美味しいんですよ!

また、学校給食に無償で提供する農家さんも少なくありません。
青森県の学校給食では、りんごが毎日のように出るので、子どもたちの健康と笑顔につながっています。

筆者の子どもが通う小学校でも、提供できるりんごがあれば登校時に持たせてほしいと連絡がありました。
自分のおじいちゃんやおばあちゃん、お父さんやお母さんが作ったりんごを学校に持っていく子どもの顔は、どこか誇らしく見えます。

軽トラックの荷台にりんごがたくさん入った木箱が積まれている写真

雨のなかでも、休むことなく続く収穫作業。
朝7時から16時まで、75歳以上の高齢者4人が100箱近くのりんごを収穫する。

それも、りんごに傷がつかないよう細心の注意を払ったり、 ハシゴに登って高所のりんごを収穫したり。
さらに、日が暮れる前にクマ出没の心配をしながら作業を終えなければならない。

収穫現場の舞台裏には、想像以上の手間と体力、そして緊張感が詰まっていました。

スーパーで真っ赤に輝くりんごを手に取るとき、この収穫風景を少しでも思い出してもらえたら嬉しいです。

なついろ

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嫁ぎ先はりんご農家の青森ライター

ライターという仕事を通して、生まれ育った青森県の魅力を伝えたいと思っています。りんごももちろん大好きですが、1番好きなフルーツはシャインマスカット!

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