
つややかな宝石のような見た目と、ぷつっ弾ける甘さがたまらないさくらんぼ。その旬の味を求め、編集部がたどり着いたのが、山形県天童市にある「王将果樹園」
そこには、さくらんぼ狩りから、採れたてフルーツを使った絶品パフェ、さらにはこだわりの加工品まで、さくらんぼを余すことなく堪能できる夢のような空間が広がっていました。
今回は代表の矢萩美智さんに、さくらんぼ作りへのこだわりをインタビュー。記事の後半ではさくらんぼ狩りの体験レポートをお届けします。
※2025年さくらんぼ狩りについて
さくらんぼ狩りの予約は終了しました。畑の様子により、当日受付を行う場合があります。詳しくは王将果樹園の公式HPをご確認ください。
「さくらんぼは生らせてなんぼ」不作傾向の中、収穫量を維持できた理由とは

編集部:今年の山形のさくらんぼは、平年より収穫量が少ないとお聞きしました。王将果樹園ではいかがですか?
矢萩:そうですね、残念ながら山形県全体で見ると今年は不作傾向です。県の作柄調査によると、平年の7割から8割くらいの収穫量になると言われています。ですが、うちは平年並みを見込んでます。
編集部:それはすごい!なにか特別な対策を?
矢萩:さくらんぼの肝は「受粉」です。一般的にはミツバチとかの訪花昆虫に任せることが多いですが、今年は花が咲く時期に訪花昆虫が飛ぶにはあまりよろしくない天気が続きました。それが不作傾向の原因と言われています。
我々は、蜂にプラスして「人工授粉」を行っています。専用の道具を使っての交配作業を、5日間続けます。今年はそれが効果てきめんだったかなと。
編集部:5日間ずっと……気が遠くなりそうな作業ですね。
矢萩:まあ、コスパは悪いですね。天気が良かったらやらなくても良いことですから。しかし我々は「さくらんぼは生らせてなんぼ」だと思っています。なので、人工授粉は今年だけじゃなく、かなり前から徹底しているんです。さくらんぼ作りがおろそかになっては、売れないし加工もできませんから。
編集部:その他にもさくらんぼを作るために気を付けていることはありますか?
矢萩:いろんな品種を作ることですね。うちでは30品種のさくらんぼを植えています。理由はやはり「受粉」です。さくらんぼが実を結ぶには、異なる品種の花粉が必要です。植えている品種が少ないと、花が咲く時期がずれて交配できない、なんてことがあります。いろんな品種を植えておくことで、そのリスクを減らしています。
編集部:30品種はとても多いですね!それだけのたくさんの品種を、カフェやショップで楽しめるのも嬉しいと思いました。
矢萩:カフェやショップも、お客様の声をダイレクトに聞くことができる「直接販売」にこだわっています。「自分たちで作って、自分たちの価格で売りたい」というのはありますね。

お客様の快適さと、従業員の働きやすさを追求したこだわりの建築

編集部:道路からよく見えるオブジェや外観など、建物が素敵だなと感じました。いつ頃建てられたのでしょうか?
矢萩:2016年です。もともと自分の頭の中に建物のイメージがあって、北海道から沖縄まで設計士と建物を見て回って「ここがいいな」とか「こういうものがほしい」とか、いろいろ伝えてできたのがこの建物です。
編集部:特にこだわったポイントを教えてください。
矢萩:いろいろありますが、2階カウンター席からの景色です。大体ハウスと同じ高さになっているんです。ハウスに上った時に見える景色って、すごい綺麗なんですよ。果樹園の向こうに山々が広がっていて。カウンター席は「この景色を絶対お客様に見せたい」と思って作りました。

矢萩:あとは、導線の良い建物にしたかった。まず、ど真ん中の一番良いところに、普段私やスタッフがいる事務所を置きました。ここなら、来客対応や手が足りない場所への応援がすぐにできます。
でも、建てる当時設計士には「このど真ん中は一番いいところだから、売り場にしないともったいない!」って言われましたよ。「いや、ここは事務所にする!」と返しましたが。
お客様が快適に過ごすのはもちろん、従業員が楽しく働ける環境にしたい。そこを大事にして建てましたね。
外部環境にあわせて変わっていく、柔軟な経営

編集部:今私たちがいるこの場所も、風が通ってすごく気持ちが良いですね。
矢萩:ここは「果樹園テラス」というところで、コロナ禍をきっかけに作りました。感染対策で屋内の席が使えなくなったので、中がだめなら外に作っちゃえ!って。シャインマスカットを作っているハウスの下に椅子を置いて、ここでパフェを食べてもらおうって考えました。
編集部:困難な状況にもかかわらず、新しい試みを始められたのですね。様々なことにチャレンジされていますが、経営を続ける上で、矢萩さんが最も大切にされていることは何でしょうか?
矢萩:外部環境にあわせて変わっていくことですかね。去年と同じことをやらなきゃいけないっていう先入観が一番危険だと思います。もちろん、過去は参考にはしますよ。でも決して、それはやらなきゃいけないことじゃないと思ってます。
日々の作業も会社も、昨日や去年と違うことを考えて工夫してみる。それでダメだったら戻せばいい。なにもやらないのは衰退していくのと一緒だと感じています。もっと効率よくとか、楽しくとか、少しでも前に進むように日々考えています。
さくらんぼ狩りを体験!人気品種が食べ放題
お話を伺った後、フルフム編集部もさくらんぼ狩りに参加しました。ここからは体験レポをお届けします。
王将果樹園のさくらんぼ狩りは、畑で育てている30品種の中から、その時期旬のさくらんぼ2〜3品種が食べ放題!佐藤錦はいつでも食べられるようにしているそうです。最近は紅秀峰を希望される方が多く、佐藤錦・紅秀峰が絶対食べられるプランもあります。今回編集部は「温室ハウスのさくらんぼ30分食べ放題プラン」に参加しました。
さくらんぼ狩りは9時から1時間ごとに開始するため、受付を済ませたら開始時間まで説明ビデオを見ながら過ごします。

受付時に渡されるさくらんぼ柄の用紙を折りたたむと種入れカップになるので、一緒に渡される洗濯ばさみで服に取りつけて準備万端!

開始時間になり、スタッフの方に案内されて徒歩3分。さくらんぼのハウスに到着しました。
入口をくぐると、大きく実ったさくらんぼがたくさん!

「よく噛んで、お腹いっぱい食べてくださいね。それではどうぞ!」スタッフの方の合図で、さくらんぼ狩りスタートです!
編集部を含め10人以上参加していたので「全員がお腹いっぱいになるまで食べたら、さすがになくなってしまうのでは?」と一瞬不安になりましたが……


その心配を吹き飛ばすほど、たくさんの実がついていました!

どのさくらんぼも太陽の光をたくさん浴びて、きらきらと輝いています。そして、食べてみると驚くほど甘くておいしい!ぷつっとした歯ごたえも心地よく、一粒食べたときの満足感が非常に高いです。このクオリティーのさくらんぼをお腹いっぱい食べられることに感動しました。
ハウスの中には「佐藤錦」「紅秀峰」「紅さやか」がそれぞれ4~5本植えられていて、品種ごとの食べ比べはもちろん、「木が違う同じ品種の食べ比べ」なんて贅沢なこともできます。
次のさくらんぼを探していると、常駐しているスタッフの方が「日が良く当たる高いところのさくらんぼはおいしいですよ。あのあたりとかおすすめです」と話しかけてくださいました。わからないことがあれば丁寧に教えてくれるので、初心者の方も安心です。ハウス内には自由に使える脚立があり、高いところのさくらんぼも自由に収穫することができます。
そうして夢中でさくらんぼ狩りを楽しんでいると、30分もたたずお腹いっぱいに!大満足でハウスを後にしました。
ショップやカフェ、自販機にも楽しみが充実
王将果樹園では、さくらんぼ狩り以外にも様々な楽しみ方があるのでご紹介します。
・oh!show!cafe
敷地内にある「oh!show!cafe」では、採れたてフルーツを贅沢に使用したパフェが大人気です。今の時期はもちろんさくらんぼ!3種類以上のさくらんぼが食べ比べできるとあり、思わず注文しました。

明らかに3種類以上盛られています。この日はなんと「佐藤錦」「紅秀峰」「大将錦」「紅さやか」「ジャボレーorナポレオン」「紅きらり」の合計6品種。多くの品種を育てている、王将果樹園ならではのパフェだと思いました。さくらんぼをたくさん食べたい方や、珍しい品種を探している方におすすめです。
そしてパフェに載っているさくらんぼは、どれも最高の状態!生クリームと合わせることで、さくらんぼの甘酸っぱさが際立ち、そのまま食べるのとはまた違った美味しさを堪能できます。
さらに、oh!show!cafeは2025年6月13日で10周年!今後、限定パフェや復刻パフェの販売を予定しているとのことです。SNSを要チェックですね。
・直営ショップ
パフェを堪能した後は、ショップでお土産を見て回ります。獲れたてのさくらんぼや、果汁100%ジュース、お菓子、お酒などさまざまな商品がずらりと並んでいます。ここでしか買えない、オリジナルの加工品も豊富で目移りしてしまいます。



・くだもの自販機
ショップの隣には自販機がならんでいて、生のフルーツ・加工品・ジュース・中身が見えない「闇」自販機など、バラエティに富んだラインナップ。



ふらっとよってパフェを食べたり、ショップで面白い商品を見つけたり、闇自販機でドキドキしたり、さくらんぼ狩り以外にもくだものを満喫できる場所がたくさんありました。さくらんぼ以外にも、もも、ぶどう、りんごといった旬のくだもの狩りやパフェが楽しめますので、お近くにお越しの際はぜひ訪れてみてください。

〒994-0103
山形県天童市大字川原子1303番地
あとがき
さくらんぼ狩りをしている時、パフェを食べている時、ショップを見て回る時、自販機のハンドルを回す時、王将果樹園にいる間は、どこにいても心地いいと感じました。園内のいたるところで目にするロゴマークは、「私たちも、お客様も、笑顔になれるような仕事をしたい」という願いが込められているとのこと。ロゴマークを決めるときも、社員全員からヒアリングを行い、最終的に多数決で決めたそうです。従業員の働きやすさや楽しさを大事にする矢萩社長の姿勢が、果樹園を訪れた人の心地よさに繋がっていると感じました。
