
こんにちは。タイの北部最大の都市チェンマイ在住の伸び太です。
チェンマイで開かれる「雲南マーケット(Yunnan Market)」を歩きながら出会った、ちょっと不思議でとびきり甘いフルーツをご紹介します。
異国の香りに包まれる「雲南マーケット」



チェンマイの旧市街から車で10分ほど。
週末になると、地元の人や観光客でにぎわうマーケットがあります。
ここは、中国南西部の雲南省にルーツを持つ人々が集う、多民族文化の交差点。
テントが連なる通りには、色鮮やかな果物や野菜、香り立つハーブやスパイス、干し肉や薬草、民族衣装や陶器まで、まるでアジアの縮図のような光景が広がります。
湯気の立つ麺の屋台からは「過橋米線(グオチャオミーシェン)」の香りが漂い、隣の店ではプーアル茶を試飲する人々の笑い声。
耳を澄ますと、タイ語、中国語、そして少数民族の言葉が入り混じり、言葉の万華鏡のよう。
歩くだけで、まるで国境を越える旅をしている気分になります。
緑色のごつごつした実——「アテモヤ」との出会い

市場を歩いていると、見慣れない緑色の果物が目にとまりました。
ゴツゴツした外皮にハート形のようなフォルム。
店主のおばあさんに聞くと、笑顔で「アテモヤ!」と一言。
初めて聞く名前に興味津々。
指先で触れるとまだ硬く、ずっしりとした重みがあります。
おばあさんは「数日おいて柔らかくなったら甘いよ」と教えてくれました。
その言葉を信じて、ひとつ購入してみることにしました。
アテモヤとは?

アテモヤは、南米原産の「チェリモヤ(Cherimoya)」と中南米原産の「バンレイシ(Sugar Apple/釈迦頭)」を掛け合わせて生まれたハイブリッドフルーツです。
1908年にイギリスの植物学者 P. J. Wester が交配したといわれており、その後、イスラエルやオーストラリア、台湾などに広まり、現在ではタイでも広く栽培されています。
名前の由来は、ブラジルでの呼び名「Ate(アテ)」と「Moya(チェリモヤ)」を組み合わせた造語。
まさに国境を越えて育った“奇跡の果実”といえます。
森のアイスクリームと呼ばれる理由

アテモヤは、そのとろけるような甘さとクリーミーな舌ざわりから、“森のアイスクリーム”とも呼ばれています。
白く柔らかい果肉は、まるでバニラアイスのよう。
香りはパイナップルと洋ナシの中間のようなフルーティさがあり、ひと口で南国の風景が広がります。
ただし、買った直後はとても硬く、アボカドのように追熟が必要。
手のひらで軽く押して、少し弾力が出た頃が「食べごろサイン」です。
実際に食べてみた



数日後、果皮が少し黒ずみ、手に持つとやわらかくなってきた頃を見計らってナイフを入れると、白く輝く果肉が現れました。
スプーンですくって食べてみると、「……あまい!」まるでアイスクリームのようななめらかさ。
後味にほんのりトロピカルな香りが残ります。
子どもたちにも食べてもらいましたが、「アイスみたい!」「もっと食べたい!」と大喜び。
冷やして食べると、まるで天然のスイーツのようです。
熱帯の女王と呼ばれる果実
アテモヤは、その甘さと希少性から「熱帯の女王」とも呼ばれています。
タイでは高級フルーツとして贈答用にも人気があり、日本でも沖縄や鹿児島で少量ながら栽培されています。
栄養価も高く、ビタミンCや食物繊維が豊富で、疲労回復や美容にも効果的。
見た目は素朴でも、中身はとびきり上品なフルーツなのです。
おわりに

雲南マーケットには、まだまだ知られざるアジアの味がたくさんあります。
異国の香り漂う通りで、見たことのない果物を手に取る——
それは小さな冒険であり、食を通じて文化を感じる旅でもあります。
これからも、チェンマイの市場からタイやアジアのローカルフルーツを紹介していく予定です。
それでは、また次回。サワディーチャオ!




























